【心電図シリーズ第1回】「右脚ブロック」は病気?健診で指摘されても慌てないために。|しきファミリークリニック|岡崎市柱曙の内科・循環器内科

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【心電図シリーズ第1回】「右脚ブロック」は病気?健診で指摘されても慌てないために。



しきファミリークリニック院長の志貴祐一郎です🫀

心電図の不安を専門医が解消!「しきファミリークリニック」の健康診断所見シリーズ開始

 

健康診断の結果には、普段聞き慣れない専門用語が並びます。特に「心電図」の欄に「右脚ブロック」「ST-T変化」「期外収縮」といった言葉が書かれていると、「重大な病気ではないか?」と、強い不安を感じる方が多くいらっしゃいます。
 

循環器専門医および不整脈専門医としての専門的な視点を活かし、このたび「健康診断所見シリーズ」をスタートいたします。
 

このシリーズでは、健診でよく指摘される心電図所見を一つひとつ取り上げ、~「なぜ指摘されたのか」「治療が必要なのか」「専門医による精査が必要なケースは?」~という疑問に、分かりやすい言葉でお答えしていきます。

 

第1回は、指摘頻度が最も高い心電図所見の一つ、「右脚ブロック」について解説します。

 

 

1.右脚ブロックとは?心臓の「電気の流れ」を理解しよう

「ブロック」とは、心臓の電気の通り道が、何らかの原因で少し「渋滞」している状態を指します。
 

心臓の電気の流れの基本

心臓は、筋肉が動くことで血液を全身に送り出すポンプですが、この筋肉を動かす指令を出しているのが「電気信号」です。
 

心臓の中には、心臓全体に電気を伝える「電線」のような通り道があります。この電線が、心臓の下部で右心室左心室に電気を伝えるために、「右脚(うきゃく)左脚(さきゃく)」という二手に分かれています。

 

 
 

右脚ブロックの正体

右脚ブロックとは、この電線のうち、右心室へ電気を伝える「右脚」の通り道が、何らかの原因でわずかに遅延している状態を指します。

例えるなら、二車線道路が一時的に片側一車線(右側)で渋滞しているような状態です。
 

  • 左心室への電気はスムーズに伝わるため、心臓のポンプ機能の大部分は問題なく動いています。
  • しかし、右心室への電気がわずかに遅れて到着するため、心電図の波形に特徴的な「ズレ」として現れます。

 
このズレが大きいと「完全右脚ブロック」、わずかな場合は「不完全右脚ブロック」と診断されます。
 
 

2.なぜ不安になる?「ブロック」という言葉の誤解


右脚ブロックが指摘された方が不安になる最大の理由は、「ブロック=止まる」というイメージです。

しかし、心臓の電気伝導の世界でいう「ブロック」は、「完全に電気が遮断されている」という意味ではありません。
 

  • 完全な遮断ではない: 右脚ブロックは、電気が遅れてはいるものの、最終的には右心室に到達しています。心臓のポンプ機能(血液を送り出す力)自体は、ほとんどの場合、正常に保たれています。
  • 症状がないことがほとんど: 右脚ブロックがあっても、ご自身で脈が飛ぶ、胸が苦しいといった自覚症状を感じることはほぼありません。自覚症状がないため、健康診断で初めて指摘されるケースがほとんどなのです。

したがって、「心臓が急に止まってしまうのではないか」という心配は、多くの場合、必要ありません。


 
3.循環器専門医が解説!右脚ブロックはなぜ「経過観察」が多いのか


私たちが循環器専門医として、右脚ブロックに対してすぐに治療を推奨しないのは、「病気がなくても見られる頻度が極めて高い」からです。


なぜ健常者にも見られるのか?

右脚ブロックは、特に以下のような方に多く見られます。

  1. 心臓の構造上の特性: 右脚は、左脚に比べて構造上やや細く、負担がかかりやすい位置にあるため、生まれつき、あるいは成長過程で電気が伝わりにくい状態になっていることがある。
  2. 若年層・成人にも多い: 基礎疾患(病気)がない若年層や中高年の方の心電図にも、約 0.3%の確率で見つかるとされている。
  3. 体格の影響: 痩せ型の方や、胸郭(肋骨や胸骨)の形によって、心臓の電気信号の伝わり方が変わり、心電図に右脚ブロックの波形として現れることもある。


【重要な原則】
自覚症状がなく、心臓超音波検査で心臓に異常が見つからない右脚ブロックは、原則として治療は不要であり、定期的な経過観察となります。

 

4.ただし要注意!精査が必要なケースもあります


右脚ブロックが「経過観察で大丈夫」なことが多いとはいえ、専門医による精密検査(精査)が推奨されるケースもあります。

右脚ブロックの波形自体が直接的な原因ではなく、別の重篤な病気が隠れていないかを確認するためです。
  

精査が必要な3つのケース

(1)心臓超音波(エコー)検査で異常が見つかった場合

心電図だけでは分からない心臓の構造や動きを確認するために、心臓超音波検査は必須です。この検査で以下の疾患が見つかった場合は、右脚ブロックがその疾患によって引き起こされている可能性があるため、治療が必要になります。

  • 肺高血圧症: 肺の血管の圧力が異常に高い病気。右心室に大きな負担がかかるため、右脚ブロックを引き起こすことがあります。
  • 心臓弁膜症: 心臓の弁に異常がある場合。
  • 心筋症: 心臓の筋肉自体に病気がある場合。

(2)心電図に別の「警告サイン」がある場合

右脚ブロックに加えて、心電図に「左軸偏位(さじくへんい)」が合併している場合など、別の異常所見がある場合は、より詳細な検査が必要になることがあります。

また、失神(意識を失うこと)を伴う不整脈など、別の重篤な不整脈を合併していないかを調べるために、ホルター心電図(24時間心電図)を行うこともあります。

(3)前回の健診から波形が「変化」した場合
以前の心電図には異常がなかったのに、急に右脚ブロックが指摘された場合は、心臓に何らかの異常は発生したサインである可能性があるため、専門医による詳しい検査が必要です。

  
  
5.岡崎市の皆様へ:不安は専門医にご相談ください
 

健康診断で「右脚ブロック」と指摘されても、まずは一人で悩まず、循環器専門医にご相談ください。

当院では、心電図の結果を評価するだけでなく、心臓超音波検査ホルター心電図検査といった精査をスムーズに行い、その右脚ブロックが「経過観察で大丈夫なものなのか」「治療が必要な基礎疾患を伴うものなのか」を正確に診断することができます。健診結果に不安を感じたら、いつでもご相談ください。
 

【次回予告】 心電図シリーズ第2回は、高血圧の方に多い心電図所見「左室高電位(心肥大の可能性)」について解説します。


記事を書いた人
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院長:循環器内科専門医、不整脈専門医
志貴 祐一郎

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