こんにちは。しきファミリークリニック院長の志貴祐一郎です🫀
3回に分けて「肥満症(ひまんしょう)」について、基礎から最新治療法まで、わかりやすくお話ししたいと思います。
「最近ちょっと太ったかも」「お腹まわりが気になる」
そんな風に体型を気にすることは、多くの人にとって身近なテーマです。
ですが、「肥満」と「肥満症」はまったくの別物であること、ご存じでしょうか?
■ 肥満=病気ではない?
医学的には、体格を「BMI(体格指数)」という数値で評価します。
BMIは「体重(kg)÷身長(m)の二乗」で計算され、25以上が「肥満」とされます。
しかし、単にBMIが25を超えているからといって、それだけで「病気」とはみなされません。
多くの人が「ちょっと太っているけれど元気」と感じているように、肥満=即治療対象ではないのです。
■ “肥満症”とは何か?
「肥満症」と診断されるのは、肥満により健康被害が起きている、あるいはそのリスクが高い場合です。
たとえば次のような病気や症状があると、肥満症と判断されます:
- 耐糖能障害(2型糖尿病や耐糖能異常など)
- 脂質異常症(血中コレステロールや中性脂肪の異常)
- 高血圧
- 高尿酸血症・痛風
- 冠動脈疾患:心筋梗塞・狭心症
- 脳梗塞:脳血栓症・一過性脳虚血発作
- 非アルコール性脂肪性肝疾患
- 月経異常・不妊
- 閉塞性睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群
- 運動器疾患:変形性関節症(膝関節症や股関節症など)・変形性脊椎症
- 肥満関連腎臓病
これらを“肥満に伴う健康障害”と呼びます。
つまり、**肥満症とは「見た目の体型」ではなく「体の中で起きている病気」**であるということです。
■ 肥満が引き起こす本当のリスク
肥満、特に内臓脂肪が多くなると、体の中では慢性的な炎症やホルモンの乱れが生じます。
その結果、血管や臓器に負担がかかり、以下のようなリスクが高まります:
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心筋梗塞・脳卒中などの心血管疾患
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一部のがん(大腸がん・乳がんなど)
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認知症
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腎機能の低下
「少し太っているだけ」と放置していると、将来的に命に関わる病気へとつながっていくのです。
■ 「自己責任」ではありません
肥満というと、「自己管理ができていない」「だらしない」という誤解を持たれがちです。
しかし、実際には以下のような様々な要因が関係しています:
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遺伝
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ホルモンバランス
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睡眠不足
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ストレス
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薬の副作用 など
ですから、“頑張れば痩せられるはず”という考えは、必ずしも正しくありません。
むしろ、「自分ではどうにもならないからこそ、医療の力が必要」と考えてほしいのです。
■ 肥満症は“治療すべき病気”
日本肥満症学会も、肥満症はれっきとした**慢性疾患(生活習慣病)**であり、医学的に治療が可能な病気であると明言しています。
治療の基本は「生活習慣の見直し」ですが、なかなかうまくいかない方や、合併症が進行している方には、薬を使った治療も選択肢となります。
その一つが、第3回ご紹介する「ウゴービ(セマグルチド)」という新しい注射薬です。
医学の進歩により、「体重を落とすための治療」から、「命と健康を守るための治療」へと肥満治療は進化しています。
■ 次回は「治療」の話を詳しく!
次回の記事では、肥満症の基本的な治療である「食事療法」「運動療法」について具体的にご紹介します。
「つらい食事制限」や「きつい運動」だけが治療ではない、ということもお伝えできればと思います。
記事を書いた人
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院長:循環器内科専門医
志貴 祐一郎
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