冬こそ注意!ヒートショックとは? ー寒い季節に増える“突然の危険”から身を守るためにー|しきファミリークリニック|岡崎市柱曙の内科・循環器内科

愛知県岡崎市柱曙1-10-15

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冬こそ注意!ヒートショックとは? ー寒い季節に増える“突然の危険”から身を守るためにー




しきファミリークリニック院長の志貴祐一郎です🫀
  
 

はじめに

冬本番を迎え、朝晩の冷え込みが厳しくなってきました。

ご自宅の暖かいリビングから、冷え切った脱衣所へ移動した瞬間、「ヒヤッ」とした経験はありませんか?

その一瞬の「ヒヤッ」の中に、重大な命の危険が潜んでいることをご存知でしょうか。それが、急激な温度変化が引き起こす体のショック状態、「ヒートショック」です。

特に寒さが本格化するこれからの時期、高齢者だけでなく、ご家族全員がヒートショックのリスクと対策について正しく知っておくことが非常に重要です。

この記事では、ヒートショックとは何か、なぜ危険なのか、そして家庭で簡単にできる具体的な対策を、専門的な視点から分かりやすく解説します。


 

 
1. ヒートショックとは?

ヒートショックとは、急激な温度変化によって血圧が大きく変動し、心臓や血管、脳に大きな負担がかかる現象 のことを指します。

  • 暖かいリビング → 寒い脱衣所へ

  • 寒い脱衣所 → 熱い風呂へ

    こうした移動の際、体温調節のために血管が急に縮んだり広がったりし、血圧が大きく変動します。

その結果、

  • 失神

  • 不整脈

  • 心筋梗塞

  • 脳卒中(脳出血・脳梗塞)

  • 浴槽内での溺水事故

といった重大な健康被害につながることがあります。
  

 

2. なぜ冬に増えるのか?

ヒートショックの根本的な原因は、急激な温度差による自律神経の乱れと血圧の乱高下にあります。
特に冬場は、以下の理由からこの危険性が高まります。
 

● ① 室内外・部屋間の温度差が大きい

冬の日本では、暖かいリビングと、廊下、脱衣所、浴室といった暖房のない場所との温度差が非常に大きくなります。
特に築年数の長い住宅は、浴室や脱衣所が冷え込みやすく、温度差が10〜15℃以上になることも珍しくありません。
寒い場所に移動した瞬間、自律神経は体温を逃さないように血管をキュッと収縮させ、血圧が急上昇します。
この「冷え」による血圧上昇こそがヒートショックの最初の引き金です。
 

● ② 入浴時の血圧変動が大きい

入浴時は、ヒートショックが起こる上で最も危険なタイミングです。

【寒い脱衣所 → 熱い浴槽に入る】という一連の動作が、血圧を激しく乱高下させます。

  1. 寒い脱衣所: 血管収縮により血圧が上昇。

  2. 熱い浴槽: 血管が一気に拡張し、血圧が急降下。

このジェットコースターのような激しい血圧の乱高下が、心臓や脳の血管に致命的なダメージを与えます。
急激な血圧低下は脳への血流不足を引き起こし、めまいや失神(立ちくらみのような状態)につながり、浴槽内で溺れてしまう事故にもつながります。
 

● ③ 長風呂・高温浴が多い

寒い季節は「熱いお風呂にゆっくり入りたい」と感じますが、それもヒートショックのリスク要因です。

  • 高温浴(42℃以上): 高温のお湯は交感神経を刺激し、心拍数を上げ、血圧を急激に下げます。

  • 長風呂(15分以上): 汗を大量にかくことで脱水状態となり、血液が濃く(ドロドロに)なり、脳梗塞や心筋梗塞のリスクを高めます。特に湯船に浸かりすぎると、浴槽から立ち上がる際に血圧がさらに下がり(起立性低血圧)、意識を失いやすくなります。
     

● ④ 高齢者・持病がある人は血圧調節が低下

ヒートショックによる事故の約9割は65歳以上の高齢者で起こっています。これは、加齢や持病によって、体の血圧調節機能が低下しているためです。

  • 血管の反応が鈍くなる: 年齢とともに血管の弾力性が失われ(動脈硬化)、急激な温度変化や血圧の変化に柔軟に対応できなくなります。

  • 基礎疾患の影響: 高血圧、糖尿病、心臓病などの持病がある方は、もともと血管に負担がかかっているため、ヒートショックのリスクがさらに高まります。


この自律神経の乱れと血圧の変動のメカニズムを理解し、対策することが、ご家族の命を守ることにつながります。
 
 

3. どんな人が特に注意すべき?

次のような方はヒートショックのリスクが高いといわれています。

  • 高血圧のある方

  • 心臓病(不整脈・心不全・狭心症など)

  • 糖尿病(自律神経障害があることも)

  • 高齢者(特に75歳以上)

  • 一人暮らしの方

  • 飲酒後の入浴をする習慣がある方

また、冬の夕方〜夜にかけて入浴する人が多いため、事故はこの時間帯に集中しています。
 
 

4. ヒートショックはどこで起こる?

家庭内で特に注意すべき場所は以下の3つです。

  1. 脱衣所・浴室:暖かいリビングから寒い脱衣所へ移動し、さらに熱い湯船に入るという、急激な温度変化が連続する場所です。

  2. トイレ:暖房のない廊下やトイレは冷えやすく、特に夜間の急な移動でリスクが高まります。

  3. 就寝時・起床時:暖かい布団から出たときや、就寝中に体温が下がり過ぎた時にも血圧が変動しやすいです。



 

 
 
5. 内科医が教える!家庭でできるヒートショック対策

ヒートショック対策の基本は、「住環境の温度差をなくすこと」「正しいお風呂の入り方を実践すること」です。
ご家族全員の意識と行動で、リスクを大きく減らすことができます。


(1)住環境の温度差をなくす対策
「寒い場所をなくす」が最大の予防効果を生みます。特に、入浴前後の急激な温度変化を防ぐことが重要です。

① 脱衣所・浴室を暖める

  • 脱衣所に 暖房器具(セラミックヒーターなど)を使用。
  • 入浴5〜10分前に浴室暖房を使用
  • シャワーで浴室全体を温める方法や浴槽のふたを開けておくのも有効

②トイレ・廊下を暖める
暖房器具の設置 


※point:室温を18℃以上に

② お湯の温度は 41℃以下 に

  • 熱すぎるお湯は血圧を急上昇させます

  • ぬるめの 38〜40℃ が理想


③ 長風呂は避ける

入浴時間は 10〜15分以内 が目安。
のぼせも防ぎます。


④ 入浴前に家族へひと言

  • 「今からお風呂入るね」と声をかける

  • 一人暮らしの方は、入浴時間を決めておくのも効果的


⑤ 食後すぐ・飲酒後の入浴は避ける

  • 飲酒は血圧を急激に下げやすい

  • 食後は血圧が不安定になりやすい 


⑥ 体調が悪い日は無理に入浴しない

  • めまい

  • 動悸

  • 息苦しさ

  • 強い疲労

こうした症状がある日はシャワーか、入浴を控えて休むことも大切です。
 
 

6. 家族が気づけるヒートショックのサイン

以下のような様子は危険なサインです:

  • 急にぐったりする

  • 呼びかけても反応が鈍い

  • ふらつく

  • 顔色が悪い

  • 手足が冷たい

  • 不整脈が出ている

  • 胸の痛み・動悸

もし浴槽で意識がない場合は
119番通報 → すぐに浴槽から救出
が必要です。(無理に引き上げられない場合は救急隊の指示に従う) 
 
 

7.まとめ

  • ヒートショックは 急激な温度変化による血圧の乱高下 が原因

  • 冬の浴室・脱衣所・トイレで起こりやすい

  • 高齢者・高血圧・心疾患のある方は特に注意

  • 脱衣所と浴室を暖める、湯温は40℃、飲酒後の入浴を避ける が重要

  • 家族の見守りや声かけも大切

冬は健康トラブルが増える季節ですが、正しい対策で安全に、そして快適に過ごすことができます。
地域の皆さまが安心して冬を迎えられるよう、しきファミリークリニックも全力でサポートいたします。
 
  

8. 院長からのメッセージ

ヒートショックは“冬に突然起こるもの”と思われがちですが、正しい知識と対策があれば 予防できます。

当院では

  • 高血圧・心臓病の管理

  • 冬場の体調相談

  • 入浴の注意点のアドバイス

  • 高齢者の健康管理サポート

などを行っています。
少しでも不安な症状があれば、お気軽にご相談ください。
 
 

記事を書いた人
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院長:循環器内科専門医、不整脈専門医
志貴 祐一郎

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