【心電図所見シリーズ・序章】「心電図異常」と書かれても大丈夫!循環器専門医が教える、健診結果で不安にならないための基礎知識|しきファミリークリニック|岡崎市柱曙の内科・循環器内科

愛知県岡崎市柱曙1-10-15

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【心電図所見シリーズ・序章】「心電図異常」と書かれても大丈夫!循環器専門医が教える、健診結果で不安にならないための基礎知識

 
 
しきファミリークリニック院長の志貴祐一郎です🫀

今回から、当院の強みである「循環器専門医」「不整脈専門医」としての知見を活かした新シリーズをスタートします。
テーマは、健康診断で異常を指摘され、当院を受診される方の中で最も多い不安の一つ、「心電図異常」についてです。
 

このシリーズでは、健診でよく指摘される心電図所見を一つひとつ取り上げ、「なぜ指摘されたのか」「治療が必要なのか」「専門医による精査が必要なケースは?」という疑問に、分かりやすい言葉でお答えしていきます。
 
 

1. なぜ心電図は不安になりやすいのか?

血液検査の結果であれば、「H(高値)」や「L(低値)」がつき、赤字などで表示されるため、異常の程度が比較的分かりやすいかと思います。しかし、心電図はどうでしょうか。
 

  • 所見には「要観察」や「要精査」と書かれているものの、その横には「右脚ブロック」「ST-T変化」など、よく分からない専門用語がずらり。

  • 「症状がないから、まぁいいか…」と、不安を抱えつつも放置されがちなのが心電図の現状です。

 
心臓の病気は自覚症状が出にくいものも多く、「症状がないから大丈夫」とは限りません。だからこそ、心電図の結果を正しく理解し、適切に対応することが大切なのです。
  
 


2. そもそも心電図(ECG)って何?

「心電図って、いったい何を測っているの?」と思っている方も多いのではないでしょうか。

実は心臓は筋肉でできており、その筋肉は電気信号で動いています。

 
心臓の中には、心臓全体に電気を伝える「電線」のような通り道(刺激伝導系)があり、心臓に電気が流れることで、全身に血液を送るポンプとして働いています。
その流れている電気信号を身体の表面に電極を取り付けて記録するのが、心電図(Electrocardiogram:ECG)です。

 
心電図を見ることで、心臓のポンプの動きやリズムに異常がないか、不整脈や心筋梗塞など心臓の病気があるかどうかなど、心臓の状態を評価します。
  
  

3. 心電図異常=病気ではない?専門医の「プロの目」が不可欠

心臓の動きは、人間と同じで個性があります。正常な方でも、心臓の「個性」や「傾き」によって心電図に所見がつき、「異常」と記録されてしまうことがあるのです。 

多くの医療機関で使われる心電図検査機器には、機械による自動診断機能がついています。しかし、機械はその波形が「個性」なのか「本当に治療が必要な異常」なのかまでは判断できません。

そこで、私たち専門家の出番です。

心臓の専門医を志すと、先輩から「機械の判定は信用するな!」と言われたりするほどです(笑)。私たちは、単なる機械の判定ではなく、実際の波形を過去のデータや患者様の背景と照らし合わせながら、プロの目でじっくりと見て判断します
 
 


 
4. 心電図異常の2つのタイプ

心電図で指摘される異常は多岐にわたりますが、大きく分けると2つのタイプがあります。

①リズム(脈)の異常
いわゆる不整脈。正常な脈以外のすべての総称。怖くないものから緊急治療が必要なものまで様々。
例)
期外収縮(脈が飛ぶ)、心房細動(脳梗塞のリスク)など

②形態(形)の異常
心臓の壁の肥大、心臓の血管の詰まりや狭窄、心臓の傾き・向きの異常など。
例)
左室高電位(心肥大の可能性)、ST-T変化(虚血性心疾患の可能性)など
   

 

5. 心電図異常の診断は「複合的な検査」が必要

健診で心電図異常が指摘されても、必ずしも重大な病気とは限りませんが、適切な診断・対応が大切です。

心電図だけで診断に至るケースもありますが、多くの心電図異常は、複合的な検査が必要です。また、不整脈は「いつでも異常波形が出るわけではない」ため、繰り返し心電図が必要なこともあります。

さらに、心電図の異常は、心臓だけの問題ではないこともあります。放置していると脳梗塞を起こすような不整脈が隠れていたり、放置された高血圧の結果、心臓の形態異常が出ていることもあります。
 

当院では、心電図の二次精査として、以下のような専門的な検査も行い、多角的に心臓の状態を確認し、異常を見逃しません。

  • ホルター心電図(24時間心電図): 小型装置を装着し、日常生活を送りながら測定。発作的な不整脈や狭心症発作などを検出します。

  • 心臓超音波検査(心エコー): 超音波で心臓の構造や機能を評価し、心肥大や弁膜症などをチェックします。

  • 運動負荷心電図: 運動(当院では階段の昇り降り)で心臓に負荷をかけ、血流の異常や不整脈などを評価します。
     
     

まとめ:健診結果は「循環器の専門家」に相談を

健診で心電図の異常を指摘されると不安になるかもしれませんが、すべてが重大な病気というわけではありません。

大切なのは、健診結果に書かれた所見だけでなく、その人の生活習慣や基礎疾患、内服薬など様々な背景から総合的に判断することです。

  • 症状がある場合

  • 「要精査」の場合

  • 「要観察」であっても昨年はなかった所見が書かれていた場合

 
是非、この機会に健診結果をもう一度確認していただき、当院へお越しください。気軽に相談できるのが当院の魅力です。疑問はなんでもぶつけてください👍
 

健診は今の病気を見る目的だけでなく、今後起こりうる大きな病気を未然に防ぐ目的もあります。心電図異常に限らず、高血圧や糖尿病などの生活習慣病の指導なども行い、皆様の心臓の健康をサポートさせていただきます。
 
 

【次回予告】 心電図シリーズ第1回は、健診で最も指摘される「右脚ブロック」について詳しく解説します。
 

記事を書いた人
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院長:循環器内科専門医、不整脈専門医
志貴 祐一郎

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