【心電図シリーズ第5回】脈が遅いと言われたら・・  -危険な徐脈の見分け方ー|しきファミリークリニック|岡崎市柱曙の内科・循環器内科

愛知県岡崎市柱曙1-10-15

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【心電図シリーズ第5回】脈が遅いと言われたら・・  -危険な徐脈の見分け方ー

 
しきファミリークリニック院長 循環器・不整脈専門医の志貴祐一郎です🫀 

 
健康診断で

  • 「脈が遅いですね」

  • 「洞性徐脈があります」

  • 「房室ブロックを認めます」

と言われ、不安になったことはありませんか? 
 

心拍数は一般的に 1分間60〜100回 が正常範囲です。
60回未満を 徐脈(じょみゃく) と呼びます。 
 

しかし実際には、

  • 50回台で無症状 → ほぼ問題なし

  • 40回台以下、あるいは脈が止まる瞬間がある → 精密評価が必要

と考えます。 
 

重要なのは、「数字」よりも「症状」と「電気の流れの質」です。

心臓は「電気」で動いている臓器です

心臓は、ただの筋肉の塊ではありません。
実は「電気の合図」によって、規則正しく動いています。

心臓の右上にある「洞結節(どうけっせつ)」という小さな発電所がスタートの合図を出し、その電気が中継地点である「房室結節(ぼうしつけっせつ)」を通って心臓全体に広がることで、ドクン、ドクンと拍動しています。

この電気の通り道のことを、医学的には「刺激伝導系(しげきでんどうけい)」と呼びます。
 

 
 
 

1. 徐脈には2つのタイプがある

 
徐脈は大きく分けて次の2種類です。 
 

① 洞性徐脈(発電がゆっくり)

心臓の発電所「洞結節」からの信号がゆっくり出ている状態。

→ スポーツ心臓や睡眠中に多い
→ 多くは生理的で問題なし 
 

② 房室ブロック(伝達が途切れる)

命令は出ているのに、中継地点(房室結節)で電気がうまく伝わらない状態。

→ 程度によっては危険 
 

この違いが、専門医が最も重視するポイントです。
 
 

 
 

2. スポーツ心臓はなぜ脈が遅い?

 
運動習慣のある方では、副交感神経が優位になり、

  • 安静時の脈拍 40〜50台

  • 睡眠中は30台

になることも珍しくありません。 
 

しかし重要なのはここです。
 

運動すれば、しっかり脈が上がる。

 
これがスポーツ心臓の特徴です。

つまり、

✔ 安静時は遅い
✔ 体を動かせば自然に上がる
✔ 症状がない


これが「大丈夫な徐脈」です。
 
 

3. 名前が怖い「房室ブロック」の本当の意味

 
房室ブロックとは、心房から心室へ電気が通る“関所”が詰まり気味になる状態です。
 

しかし、すべてが危険なわけではありません。 
 

■ 第1度房室ブロック

電気はすべて届いているが、少し遅いだけ。
→ 治療不要、経過観察。 
 

■ 第2度房室ブロック(ウェンケバッハ型)

徐々に遅れて、時々1拍抜ける。
→ 若年者・スポーツ選手でよく見られ、多くは問題なし。
 

ここまでは比較的「良い徐脈」の範囲です。
 
 

4. 専門医が考える「危険な境界線」

 
本当に注意すべきなのは次の場合です。 
 

■ 第2度房室ブロック(モビッツⅡ型)

突然、規則的に信号が落ちる。
→ 進行して完全ブロックになる危険あり。 
 

■ 第3度(完全)房室ブロック

心房と心室が完全にバラバラで動く。
→ ペースメーカー適応となることが多い。
 
 

🔎 専門医が見る“境界線”とは?

 
私たちが判断する基準は次の3点です。 
 

  1. 症状があるか

    • 失神

    • 強いめまい

    • 運動時の息切れ
        

  2. 脈が止まる時間

    • 3秒以上の停止は要注意

    • 5秒以上ならペースメーカー検討
        

  3. 運動で脈が上がるか

    • 上がれば生理的徐脈の可能性大

    • 上がらない・逆に悪化する → 危険
       

これが「スポーツ心臓」と「治療が必要な徐脈」の決定的な違いです。
 
 

5. 見逃してはいけない危険サイン

 
以下がある場合は、必ず受診を検討してください。

  • 意識を失ったことがある

  • 最近、原因不明の転倒がある

  • 動くとすぐに息切れする

  • 家族に突然死の既往がある
     

特に失神は最重要サインです。
 
 

6. 専門医が行う検査

 
当院では次の検査を組み合わせて判断します。 
 

✔ ホルター心電図

睡眠中の最低心拍数・停止時間を確認 

✔ 運動負荷心電図

運動時に心拍が適切に上昇するか評価 

✔ 心エコー

構造的心疾患がないか確認 

 
これらを総合して
「安心できる徐脈」か「治療が必要な徐脈」かを判断します。
 
 

7. 不整脈専門医からのメッセージ

 
「脈が遅い」ことは、必ずしも悪いことではありません。
むしろ長寿と関連するという報告もあります。 
 

しかし、

✔ 症状がある
✔ 運動で脈が上がらない
✔ 電気が途中で途絶えている
 

このどれかが当てはまれば、それは「体からの重要なサイン」です。 
 

「スポーツをやっていたから大丈夫」と自己判断せず、一度、専門医で評価を受けてください。 

検査の結果、「大丈夫な徐脈ですね」と分かれば、それだけで大きな安心につながります。
 
 

【次回予告】

心電図シリーズ第6回は心房細動
脳梗塞の原因となる、最も注意すべき不整脈について解説します。
 
 
記事を書いた人
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院長:循環器内科専門医、不整脈専門医
志貴 祐一郎

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