
しきファミリークリニック院長 循環器・不整脈専門医の志貴祐一郎です🫀
健康診断で
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「脈が遅いですね」
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「洞性徐脈があります」
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「房室ブロックを認めます」
と言われ、不安になったことはありませんか?
心拍数は一般的に 1分間60〜100回 が正常範囲です。
60回未満を 徐脈(じょみゃく) と呼びます。
しかし実際には、
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50回台で無症状 → ほぼ問題なし
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40回台以下、あるいは脈が止まる瞬間がある → 精密評価が必要
と考えます。
重要なのは、「数字」よりも「症状」と「電気の流れの質」です。
※
心臓は「電気」で動いている臓器です
心臓は、ただの筋肉の塊ではありません。
実は「電気の合図」によって、規則正しく動いています。
心臓の右上にある「洞結節(どうけっせつ)」という小さな発電所がスタートの合図を出し、その電気が中継地点である「房室結節(ぼうしつけっせつ)」を通って心臓全体に広がることで、ドクン、ドクンと拍動しています。
この電気の通り道のことを、医学的には「刺激伝導系(しげきでんどうけい)」と呼びます。

1. 徐脈には2つのタイプがある
徐脈は大きく分けて次の2種類です。
① 洞性徐脈(発電がゆっくり)
心臓の発電所「洞結節」からの信号がゆっくり出ている状態。
→ スポーツ心臓や睡眠中に多い
→ 多くは生理的で問題なし
② 房室ブロック(伝達が途切れる)
命令は出ているのに、中継地点(房室結節)で電気がうまく伝わらない状態。
→ 程度によっては危険
この違いが、専門医が最も重視するポイントです。

2. スポーツ心臓はなぜ脈が遅い?
運動習慣のある方では、副交感神経が優位になり、
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安静時の脈拍 40〜50台
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睡眠中は30台
になることも珍しくありません。
しかし重要なのはここです。
運動すれば、しっかり脈が上がる。
これがスポーツ心臓の特徴です。
つまり、
✔ 安静時は遅い
✔ 体を動かせば自然に上がる
✔ 症状がない
これが「大丈夫な徐脈」です。
3. 名前が怖い「房室ブロック」の本当の意味
房室ブロックとは、心房から心室へ電気が通る“関所”が詰まり気味になる状態です。
しかし、すべてが危険なわけではありません。
■ 第1度房室ブロック
電気はすべて届いているが、少し遅いだけ。
→ 治療不要、経過観察。
■ 第2度房室ブロック(ウェンケバッハ型)
徐々に遅れて、時々1拍抜ける。
→ 若年者・スポーツ選手でよく見られ、多くは問題なし。
ここまでは比較的「良い徐脈」の範囲です。
4. 専門医が考える「危険な境界線」
本当に注意すべきなのは次の場合です。
■ 第2度房室ブロック(モビッツⅡ型)
突然、規則的に信号が落ちる。
→ 進行して完全ブロックになる危険あり。
■ 第3度(完全)房室ブロック
心房と心室が完全にバラバラで動く。
→ ペースメーカー適応となることが多い。
🔎 専門医が見る“境界線”とは?
私たちが判断する基準は次の3点です。
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症状があるか
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失神
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強いめまい
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運動時の息切れ
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脈が止まる時間
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3秒以上の停止は要注意
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5秒以上ならペースメーカー検討
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運動で脈が上がるか
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上がれば生理的徐脈の可能性大
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上がらない・逆に悪化する → 危険
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これが「スポーツ心臓」と「治療が必要な徐脈」の決定的な違いです。
5. 見逃してはいけない危険サイン
以下がある場合は、必ず受診を検討してください。
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意識を失ったことがある
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最近、原因不明の転倒がある
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動くとすぐに息切れする
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家族に突然死の既往がある
特に失神は最重要サインです。
6. 専門医が行う検査
当院では次の検査を組み合わせて判断します。
✔ ホルター心電図
睡眠中の最低心拍数・停止時間を確認
✔ 運動負荷心電図
運動時に心拍が適切に上昇するか評価
✔ 心エコー
構造的心疾患がないか確認
これらを総合して
「安心できる徐脈」か「治療が必要な徐脈」かを判断します。
7. 不整脈専門医からのメッセージ
「脈が遅い」ことは、必ずしも悪いことではありません。
むしろ長寿と関連するという報告もあります。
しかし、
✔ 症状がある
✔ 運動で脈が上がらない
✔ 電気が途中で途絶えている
このどれかが当てはまれば、それは「体からの重要なサイン」です。
「スポーツをやっていたから大丈夫」と自己判断せず、一度、専門医で評価を受けてください。
検査の結果、「大丈夫な徐脈ですね」と分かれば、それだけで大きな安心につながります。
【次回予告】
心電図シリーズ第6回は「心房細動」
脳梗塞の原因となる、最も注意すべき不整脈について解説します。
記事を書いた人
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院長:循環器内科専門医、不整脈専門医
志貴 祐一郎
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