
健診で「血糖が高い」と言われたら?
糖尿病の基準・検査と受診の目安
健診結果に「血糖高値」「HbA1c高値」「要再検査」と書かれていると、
「糖尿病なのだろうか」「症状はないけれど受診が必要?」と気になる方もいると思います。
1回の健診結果だけでは糖尿病と確定しないことがありますが、異常を放置してよいという意味ではありません。
血糖値とHbA1cは、それぞれ異なる角度から血糖の状態を調べる検査です。結果を組み合わせ、必要に応じて再検査することで、今の状態と今後の対応が見えてきます。
この記事では、健診結果の見方、糖尿病の診断基準、受診の目安、生活習慣や治療について説明します。
まず知っておきたいこと
- 血糖値とHbA1cは、両方を確認することが大切です。
- 糖尿病は、症状がないまま進行することがあります。
- 異常を指摘されたら、健診結果を持って受診し、次に必要な検査を相談しましょう。
※この記事では、主に成人の健診で見つかる血糖異常を解説しています。妊娠中の血糖異常には、別の診断基準があります。
この記事の目次
1.血糖が高いと言われたら、いつ受診すればよい?
まずは、健診結果の「血糖値」「HbA1c」と、医師の判定・指示を確認してください。受診の必要性は、数値だけでなく症状やこれまでの経過も含めて判断します。
症状がなくても、早めに受診したい場合
次のいずれかに当てはまる場合は、次の年の健診まで待たず、早めに医療機関へ相談してください。
- 空腹時血糖値が126mg/dL以上
- 随時血糖値が200mg/dL以上
- HbA1cが6.5%以上
- 健診で「要受診」「要精密検査」と指示された
これらの数値は、糖尿病の可能性を確認する必要がある目安です。数値だけを見て、ご自身で診断を確定するものではありません。
数値がそれほど高くなくても、確認が必要な場合
空腹時血糖値が110~125mg/dL、HbA1cが6.0~6.4%の場合も、糖尿病が隠れていないか、追加の検査を相談したい範囲です。
また、空腹時血糖値100~109mg/dL、HbA1c 5.6~5.9%でも、体重増加、高血圧、脂質異常症、糖尿病の家族歴などがある場合は、今後の検査や生活習慣について相談しましょう。
この範囲にあるだけで、糖尿病や境界型と確定するわけではありません。
症状がある場合は、受診を急いでください
強いのどの渇き、尿量の増加、短期間の意図しない体重減少がある場合は、結果の数値にかかわらず、早めに医療機関へ相談してください。
すぐに受診が必要なサイン
吐き気・嘔吐が続く、水分を飲めない、強いだるさで動けない場合は、速やかに受診してください。
意識がぼんやりする、呼びかけへの反応が悪い、呼吸が深く速く苦しそうな場合は、119番で救急車を呼んでください。
高血糖に伴う脱水や、緊急治療が必要な状態の可能性があります。HbA1cがそれほど高くなくても、急に血糖が悪化していることがあるため、症状を優先します。
2.血糖値とHbA1cは、何が違う?
血糖値は「採血した時点の血液中のブドウ糖の濃さ」
ブドウ糖は、体を動かすためのエネルギー源です。その血液中の濃度を示したものが「血糖値」です。
血糖値は、食事や運動、体調などによって変わります。そのため、食事から何時間たって採血したかが、結果を判断するうえで重要です。
- 空腹時血糖値:原則として10時間以上、カロリーのある飲食をしていない状態で測る血糖値
- 随時血糖値:食事の時間にかかわらず測る血糖値
食後に採血した結果を、そのまま空腹時の基準と比べることはできません。
HbA1cは「過去1~2か月ほどの血糖の状態を反映する指標」
HbA1cは「ヘモグロビン・エーワンシー」と読みます。
赤血球に含まれるヘモグロビンに、ブドウ糖が結びついた割合を調べる検査です。血糖が高い状態が続くと、HbA1cも高くなります。
直前の食事だけでは大きく変わりにくいため、普段の血糖の状態を知る手がかりになります。
| 比較すること | 血糖値 | HbA1c |
|---|---|---|
| 何を示す? | 採血した時点の血糖の高さ | 過去1~2か月ほどの平均的な血糖の状態 |
| 単位 | mg/dL | % |
| 直前の食事の影響 | 受ける | 大きくは受けにくい |
| 主な役割 | 今の血糖状態を確認する | 高血糖が続いていないか確認する |
ただし、HbA1cは毎日の血糖変動をすべて示すものではありません。どちらか一方だけでなく、組み合わせて確認します。

3.血糖が高い=糖尿病? 診断基準の考え方
糖尿病は、血糖が慢性的に高くなる病気です。診断では、まず検査結果が「糖尿病型」に当てはまるかを確認します。
「糖尿病型」となる数値
| 検査 | 糖尿病型の基準 |
|---|---|
| 空腹時血糖値 | 126mg/dL以上 |
| 随時血糖値 | 200mg/dL以上 |
| 75gOGTTの2時間値 | 200mg/dL以上 |
| HbA1c(NGSP値) | 6.5%以上 |
75gOGTTは、決められた量のブドウ糖を飲み、その前後の血糖値を調べる検査です。詳しくは「医療機関で行う検査」で説明します。
「糖尿病型」と「糖尿病の確定診断」は同じではありません
糖尿病型は、検査結果が糖尿病を疑う範囲に入っているという意味です。糖尿病の確定診断では、血糖値とHbA1cの組み合わせ、別の日の検査結果、症状などを確認します。
1回の検査で診断できる場合と、再検査が必要な場合
- 同じ採血で、血糖値とHbA1cの両方が糖尿病型:1回の検査でも糖尿病と診断できます。
- 別の日の検査でも糖尿病型を確認:少なくとも1回は、血糖値が糖尿病型であることが必要です。
- 血糖値が糖尿病型で、典型的な症状、または確実な糖尿病網膜症がある:1回の検査でも診断できる場合があります。
- HbA1cだけが糖尿病型:血糖値を含めた追加の確認が必要です。
HbA1cが6.5%以上という結果を繰り返すだけでは、糖尿病の確定診断にはなりません。一方で、血糖値とHbA1cが同時に基準を満たせば、健診の検査でも診断できる場合があります。
診断に使う血糖値は、医療機関の採血で測定する静脈血漿の値です。家庭用の簡易血糖測定器や持続血糖測定器の数値だけでは、確定診断は行いません。

4.「糖尿病予備群」「境界型」「正常高値」とは?
「糖尿病予備群」は、将来糖尿病になるリスクが高い状態を説明するときに使われる言葉です。一方、「境界型」は、空腹時血糖値と75gOGTTの2時間値を用いる医学的な分類です。
正常型・境界型・糖尿病型の分類
次の表は、空腹時血糖値と75gOGTTの2時間値による分類です。
| 分類 | 血糖値の条件 |
|---|---|
| 正常型 | 空腹時血糖値が110mg/dL未満、かつOGTTの2時間値が140mg/dL未満 |
| 境界型 | 正常型にも糖尿病型にも当てはまらない |
| 糖尿病型 | 空腹時血糖値が126mg/dL以上、またはOGTTの2時間値が200mg/dL以上 |
例えば、空腹時血糖値が115mg/dLでも、OGTTの2時間値が200mg/dL以上なら糖尿病型です。空腹時血糖値だけで「境界型だから大丈夫」とは判断できません。
空腹時血糖値100~109mg/dLは「正常高値」と呼ばれます。空腹時の正常域には入りますが、追加検査で食後の血糖異常が見つかることがあります。
HbA1cだけで境界型は決まりません
HbA1cが5.6~6.4%だからといって、全員が同じ状態ではありません。血糖値やほかのリスクを合わせて、詳しい検査が必要かを判断します。
予備群と指摘された段階でも、生活習慣を見直す意味があります。早い段階で取り組むことで、2型糖尿病の発症を予防したり、遅らせたりできる可能性があります。

5.血糖が高くなる原因は? 生活習慣だけではありません
血糖を下げる働きを担うのが、膵臓から分泌される「インスリン」です。
血糖が高くなる背景には、主に次の2つがあります。
- インスリンの分泌低下:インスリンが十分に出なくなる
- インスリン抵抗性:インスリンが効きにくくなる
2型糖尿病では、遺伝的な体質に、加齢、体重増加、運動不足などの要因が重なって発症します。やせている方や、甘いものをあまり食べない方でも発症します。
また、インスリンを作る細胞が障害される1型糖尿病や、膵臓などの病気、ステロイドなどの薬剤が関係する高血糖もあります。
「自分の生活が悪かったから」と決めつける必要はありません。原因や体の状態を確認して、対応を考えることが大切です。
6.糖尿病の症状と、症状がなくても注意が必要な理由
血糖が高くなると、次のような症状が出ることがあります。
- のどが渇き、水分をたくさん飲む
- 尿の量や回数が増える
- 食事をしているのに体重が減る
- 疲れやすい、だるい
ただし、糖尿病は症状がないまま進行することがあります。「体調がよいから問題ない」とは判断できません。
高血糖が長く続くと、目の網膜、腎臓、神経などに障害が起こることがあります。また、心筋梗塞や脳梗塞などのリスクにも関係します。
これは、糖尿病になれば必ず重い合併症が起こるという意味ではありません。早く状態を把握し、血糖に加えて血圧やコレステロールなども管理することが、将来の健康を守ることにつながります。
7.医療機関では、どのような検査をする?
まず、健診結果とこれまでの経過を確認します
受診時には、今回の結果だけでなく、過去の血糖値・HbA1c、採血前の食事、体重の変化、症状、服用中の薬、家族歴などを確認します。
過去の健診結果があれば、一緒にお持ちください。数値が徐々に上がったのか、短期間で変化したのかも参考になります。
血糖値・HbA1cの再検査
必要に応じて、空腹時血糖値やHbA1cなどを調べます。
血糖値とHbA1cがかみ合わない場合は、食後の血糖上昇や急な血糖変化のほか、貧血などが影響していないかも考えます。
必要に応じて、75gOGTTを検討します
75gOGTTは「75g経口ブドウ糖負荷試験」と呼ばれます。空腹時に採血し、75gのブドウ糖を含む検査用の飲み物を飲んで、その後の血糖値を調べます。
普段の食事の2時間後に測る血糖値とは、検査条件が異なります。
空腹時血糖値だけでは分からない、糖を処理する力を確認できます。全員に必要な検査ではなく、すでに明らかな高血糖がある場合などは、ほかの検査や治療を優先します。
検査前の食事や薬の扱いは、医療機関の指示に従ってください。
糖尿病が確認されたら、合併症や全身の状態も確認します
必要に応じて、腎機能、尿中アルブミン、脂質などを調べます。眼科での眼底検査や、インスリンの分泌を調べる検査などが必要になる場合もあります。
検査内容は、血糖の高さや症状、これまでの経過に応じて選びます。
8.生活習慣は、何から見直せばよい?
大切なのは、無理な制限を短期間だけ行うことではなく、続けられる方法を見つけることです。
食事は、飲み物・量・組み合わせから
- 砂糖入りの飲み物を日常的に飲んでいる場合は、水や無糖のお茶などに置き換える
- ご飯や麺だけで済ませず、魚・肉・卵・大豆製品や野菜も組み合わせる
- 大盛り、夜遅い食事、間食の量や回数を見直す
「糖質をすべて抜く」「食事を極端に減らす」といった方法を、自己判断で始める必要はありません。年齢や体格、活動量、腎臓などの状態によって、適した食事量は異なります。
体を動かす時間を、少しずつ増やす
散歩や日常の歩行、軽い筋力トレーニングなど、続けられる活動から始めましょう。長く座り続ける時間を減らすことも、見直しの一つです。
ただし、著しい高血糖や体調不良がある場合は、運動を増やす前に受診してください。心臓や目、足などに病気がある方も、運動内容を相談しましょう。
体重の目標は、一人ひとりに合わせます
体重が多い方では、無理のない減量が血糖改善や発症予防に役立ちます。一方、やせている方や高齢の方では、体重や筋肉を減らしすぎないことも大切です。
生活習慣の見直しを始めても、必要な受診や再検査は並行して行いましょう。
9.生活習慣だけでよい? 薬が必要になるのはどんなとき?
糖尿病と診断されたら、全員がすぐに同じ薬を使うわけではありません。
2型糖尿病では、血糖の程度や全身状態によって、食事・運動の見直しから始める場合と、初めから薬を併用する場合があります。生活習慣を見直しても目標に届かない場合には、薬物治療を検討します。
一方、インスリンが大きく不足している場合や、著しい高血糖、脱水、体重減少などがある場合には、インスリンなどによる速やかな治療が必要です。
薬の必要性は、HbA1cの数字一つだけでは決まりません。年齢、腎機能、心臓の病気、低血糖の起こりやすさ、生活状況などを踏まえて選びます。
薬を使うことは、生活習慣の改善に「失敗した」という意味ではありません。体の状態に合う治療を組み合わせることが大切です。
10.健診結果について、よくあるご質問
Q.再検査で下がっていたら、もう大丈夫ですか?
再検査で基準を下回っても、今回の異常が無意味になるわけではありません。過去の値や検査条件も確認し、その後の検査時期を決めます。
すでに糖尿病と診断されている方は、数値が改善しても自己判断で通院や治療を中断しないでください。
Q.再検査は、数か月待ってから受ければよいですか?
最初の受診時期と、その後の再検査の間隔は別です。
糖尿病型の結果が出たら、まず早めに受診してください。そのうえで追加検査を行い、診断が確定しない場合には、医師の判断で3~6か月以内などの間隔で経過を確認することがあります。
Q.受診する日は、朝食を抜いた方がよいですか?
検査内容によって異なるため、予約時などにご確認ください。薬も自己判断で中止しないでください。
体調が悪い場合は、空腹になるのを待たずに相談してください。
11.当院でできること―健診結果をそのままお持ちください
しきファミリークリニックでは、健診で血糖値やHbA1cの異常を指摘された方のご相談に対応しています。
- 健診結果の確認
今回の数値や判定、過去の結果、症状を確認します。 - 必要に応じた再検査・評価
血糖値・HbA1cなどを調べ、追加の検査が必要か判断します。 - 生活習慣の相談
食事、運動、体重の変化などを伺い、無理なく取り組める方法を考えます。 - 必要に応じた治療・専門医療機関との連携
検査結果と全身の状態に合わせて、治療や専門的な評価につなげます。
健診結果をそのままお持ちください
「どの数値を見ればよいか分からない」「再検査と書かれているけれど、何をすればよいか分からない」という方も、結果用紙をそのままお持ちください。
過去の健診結果や、お薬手帳もあれば、あわせてご持参ください。
12.まとめ
健診で血糖が高いと言われても、1回の結果だけでは糖尿病と確定しないことがあります。ただし、症状がないことや、まだ確定していないことは、放置してよい理由にはなりません。
血糖値とHbA1cを合わせて確認し、必要な再検査を受けることが第一歩です。早い段階で状態を知り、生活習慣の見直しや適切な治療につなげることが、将来のリスクを減らすことに役立ちます。
健診結果をそのままお持ちいただき、今後の対応をご相談ください。
参考資料
-
- 日本糖尿病学会:糖尿病診療ガイドライン2024(第1・2・3・4・20・21章)
- 国立健康危機管理研究機構 糖尿病情報センター:糖尿病とは
- 同:糖尿病は早く見つけましょう
- 同:糖尿病と関連する検査
- 同:糖尿病予備群といわれたら
医療情報について
本記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、個々の患者さんの診断や治療に代わるものではありません。症状や経過には個人差があります。実際の対応については、医療機関で医師の診察を受けてください。

